ドングリと遺伝子の地域性
「ドングリから木を育てて庭に植えるのが夢でした。」
緑が好きな方ならこんな風に思った事がある方も居ると思います。
私もその一人です。
そして実際、近隣の緑地で拾ったクヌギやコナラのドングリから、苗を育てています。
ドングリが芽生えて2~3年生の苗も育ってきた頃、twitterである話題(トレンド)を見かけました。
それは、「ツキノワグマのために各地で集めたドングリを山奥に蒔く活動を行う団体」に対する批判の声でした。
批判の内容は大まかに以下の2つでした。
1.野生動物への給餌行為によって、野生動物が人間の給餌に依存し行動変容を引き起こしたり、感染症を誘発する可能性がある。
2.持ち込んだ種(ドングリ)との交雑によって地域特有の遺伝子を攪乱し、培われてきた生態系を乱す恐れがある。
今回私が注目したいのが2の方です。
この問題を認識するに至って、なんだか自分がとんでもない事をしでかそうとしているのではないかと思えてきました。
自分が育てたクヌギやコナラが、地元の木と交雑して、地域で脈々と受け継がれてきた遺伝子が失われる。
自分が蒔いた種がとんでもない問題を引き起こすのではないか。
すでに育っている苗を前に呆然とする私でした。(心配症なのです。)
悩んだ結果、私はそのまま苗を育て、庭に植樹する事に決めました。
それには2つの理由があります。
まず一つは、管理している庭の半径3km以内程度には、クヌギ・コナラを含む広葉樹はおろか、雑木林は絶無であること。(杞憂でした)
もう一つは、「クヌギの遺伝子の日本国内での地理的変異は有意な違いが認められない」という以下の論文の考察があること。
●クヌギおよびアベマキの核DNAの地理的変異
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsc/120/0/120_0_798/_pdf/-char/ja
※「クヌギ 地域 遺伝子」で検索すると色々出てきます。
●広葉樹の種苗の移動に関する遺伝的ガイドライン(森林総合研究所)
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/documents/2nd-chukiseika20.pdf
●地域性種苗生産のための広葉樹の採種マニュアル(埼玉県寄居林業事務所)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/40332/kouyoujyu.pdf
これらの資料を熟読して、少なくとも今回は植樹をする方向で決意を固めました。
私は心配性ですので、もはや新規に植える植物は在来種のみとする決意を固めつつあり、果ては地域固有の遺伝子まで気にし始めてしまっているので、永遠に庭は完成を見ないような気がします。
こんな風に悩んでばかりで1年2年行動を起こさないでいると、いつの間にか年老いて土も掘れなくなってしまうかもしれませんね。
【写真】庭に放たれたクヌギの苗
【写真】庭から出た廃棄物の一部をようやく処分しました。