地上部と地下部のフラクタル構造
昨日の朝にかけて、庭の図面や見積書を書きました。
私が頭の中でぼんやり思っている事の中に、庭づくりとはあまり関係ないようでいて、物凄く重要な要素かもしれない事があるので今回ブログに書いてみます。
(振り返って読んでみると、ほぼ見聞きした事の受け売りでしたが、自分なりにまとめる事が大事だと思いますので書き残しておきます。)
以前の記事で、木の剪定をするときに考えている事を書きました。
記事に書きたかった内容を簡単にまとめると、
「木の枝が、幹から枝先に向かって徐々に細くなり、しなやかな枝ぶりである事。木の全体を見ても、部分を見ても、いずれも自然な木の形を損なっていないこと。」を意識しながら剪定している。
という事です。
街路樹についての記事を書いたときにも触れたのですが、特に市街地域において樹木は無理に小さくまとめられぶつ切りにされがちな傾向があります。
この傾向は家庭の庭においても同様だと思います。
土地の境界や電線・構造物の保守のためには致し方無い事と思う一方で、スペースに余裕があるのならば、ぜひとも木をのびのびと育ててほしいという思いもあります。
木の枝ぶりはエネルギーの流れだと思います。
木を道路や河川に置き換えて考えてみると、分かりやすいかもしれません。
幹線道路や河川が途中でいきなりぶつ切りになったらどのような事が起きるか?
そんなことが起きれば、交通は大混乱し、大洪水が起こります。
木の場合も太い枝をぶつ切りにすれば、そこから強い枝が何本も伸び、エネルギーが暴走しているような姿になってしまう事が多々あります。当然木の健全な生育も阻害されると考えられます。
木を剪定するという作業においては、自然なエネルギーの流れを阻害しないという視点も大事なのだと思います。
この意識が、人間が見て美しいと感じる「自然な枝の構造」を作る事につながるのではないでしょうか。
少し飛躍しますが、樹木をグリーンインフラとして捉えた時も、樹木が自然な構造をもち健全に生育している事が、非常に重要な意味を持つのだと思います。
ここで、グリーンインフラとしての樹木の機能として考えられるものを挙げてみます。
①枝葉を広げ、夏季の地表温度を冷涼に保つ
②まとまった広さを持つビオトープ(生物生息空間)同士を結ぶ回廊的役割(生物多様性の保全に寄与)
③住民の精神的充足をもたらす
④雨水を地面に涵養する経路を保持する。(レインガーデンと同様)
樹木が健全に、自然に枝を広げていなければ、これらの機能は大幅に目減りしてしまうのではないでしょうか。
こう考えると、木を剪定するという事は、ただ単に「庭木を綺麗にする」というだけの作業ではないと思えてきて、なんだかやりがいが増す気がします。
④の「雨水を地面に涵養する経路を保持する。」機能は、目に見えない地下の事なのであまり意識される事が無いかもしれません。
しかし、ゲリラ豪雨や洪水が増加している昨今において、土地の保水機能についてのキーワードはtwitterなどでも多く見られるようになっています。
「レインガーデン」「流域治水」などの言葉がそうです。
枝の自然な構造と同じく、地下に水が染み込んでいくネットワークの構造も、今後真剣に考えていかなければならないのではないかと思います。
地下に「水が緩やかにかつダイナミックに染み込んでいくネットワーク」が存在しない、あるいはその機能が損なわれている事が、水害を深刻化する一要因なのかもしれません。
以上が、庭づくりの意義について考える中で思ったことです。
これらのことをなおざりにしない事が、心地よい庭を造ることに繋がると信じています。